フロロボンダーEの使用方法
フロロボンダーEによる表面処理は、一般的に以下の手順にて行います。
① 前処理
被処理物の汚れを除くためアセトン、MEK メタノールなどの有機溶剤により洗浄し、十分に乾燥します。
② 処理
フロロボンダーEを冷蔵保存から常温にもどし、必要量を容器に移します。(缶を振った時、活性成分が固まってできた固形物の音がすることがありますので、このような時はよく振れば固形物が溶解して音がなくなり、活性成分が均一の状態となります。)前処理済みで十分に乾燥した被処理物をフロロボンダーEに浸漬するか、或いはポリエチレン製のヘラ又はローラー等を用いて、被処理物の表面にフロロボンダーEを塗布します。
③ 処理時間
フロロボンダーEによるふっ素引抜反応は、ふっ素樹脂中のふっ素の含有割合が多いほど、また分子構造が単純なほど活発です。従って処理時間は、ふっ素樹脂の種類に応じて以下のようになりますが、いずれの場合も処理は短時間で済ますことが出来ます。
❊処理時間の許容差は処理条件にもよりますが、表記の十数倍程度まで問題ありません。
PTFE | 約3秒 |
---|---|
FEP・PFA | 約7秒 |
ふっ素ゴム | 約15秒 |
ECTFE・ETFE・PVDF | 約25秒 |
④ 後処理
設定した処理時間経過後、速やかに被処理物を容器から取出し、被処理物に付着しているフロロボンダーを、まず有機溶剤で、次に温水(~80℃)できれいに洗い落とした後、乾燥してください。溶剤と温水の洗浄順序は、逆にすることも可能です。洗浄が不十分な場合、処理効果の低下の原因となる場合があります。残渣が気になる用途では、有機溶剤と温水の洗浄を繰り返し行うとともに、洗浄液の洗浄度管理に気を付けて十分な洗浄を行えば、残渣を無視できるレベルまで落とすことが出来ます。
フロロボンダーEの寿命
栓を開けない状態で、冷蔵庫で保管した場合は、缶に表示した出荷日より6ヵ月間効力を保証します。ただし、実績的には1年程度経っても多くの場合使用が可能です。
未開封の状態で20℃の保管では3ヶ月程度、30℃では1ヶ月程度が目安です。
フロロボンダーEの効力は簡単な方法で確認することができます。(製品説明参照)
フロロボンダーT(フロロボンダーEの粘度調整剤)
通常の処理は、フロロボンダーEだけで十分ですが、
被処理物の形状や処理方法に応じて粘度を下げた方が良い場合があります。例えば、ふっ素樹脂プリント基板のスルーホール処理、連続工程の安定化、析出固形物の低減などの場合に、フロロボンダーTでフロロボンダーEの粘度を調整すると、処理効率、作業性、コストなどが改善されることがあります。
粘度の調整はフロロボンダーEにフロロボンダーTを混合するだけで簡単に出来ます。
(混合割合はE:T=1:5程度まで任意に可能です)
製品の識別
フロロボンダーEおよびTは、スチール缶に入っており、下記の商品コードで識別します。
ご注文の際には、下記の商品コードと数量を明示して下さい。
フロロボンダーE(処理剤) | |
---|---|
100g缶 | 商品コード E01 |
500g缶 | 商品コード E05 |
1,000g缶 | 商品コード E10 |
4kg缶 | 商品コード E40 |
16kg缶 | 商品コード E160 |
フロロボンダーT(粘度調整剤) | |
---|---|
100g缶 | 商品コード T01 |
500g缶 | 商品コード T05 |
1,000g缶 | 商品コード T10 |
4kg缶 | 商品コード T40 |
16kg缶 | 商品コード T160 |
フロロボンダーの主要物性
外観 | 暗緑色の液体 |
---|---|
成分 | ナトリウムナフタレン錯体の溶剤溶液 |
沸点 | 約90℃ |
引火点 | 約1℃ |
自然発火点 | 約190℃ |
※ 水と接触しても発火しません
注意点
▪消防法危険物第4類第1石油類(水溶性、指定数量:400リットル)
▪フロロボンダーは、揮発性で引火性ですから、裸火で着火することがあります。
▪フロロボンダーの蒸気は、ナフタレン臭・エーテル臭があり、多量に吸い込むと、めまいや、呼吸器系の炎症を起こすことがあります。
▪フロロボンダーが皮膚や眼に触れると炎症あるいは火傷をおこすことがあります。
▪十分に換気を行い、安全眼鏡、ゴムまたはポリエチレン製の手袋およびエプロンの着用をお奨めします。
▪水と接触しても発火することはありません。
フロロボンダーの用途
フロロボンダーは、フッ素樹脂(ふっ素樹脂又は弗素樹脂とも表記し、デュポン社のテフロンが代表例)の接着、着色、印字、メッキ等のために表面を改質させる処理剤で、主な使用例は次の通りです。
産業 | 使用部材例 |
---|---|
自動車 | オイルシール、ガスケット、燃料チューブ、ハーネス、その他自動車部品 |
電線 | フッ素樹脂電線、ケーブル |
医療 | カテーテル、チューブ |
電気・電子 | 熱転写ロール、フッ素樹脂プリント基板、感熱センサ、半導体の製造装置 |
電池 | 燃料電池セパレーター |
広告 | フッ素樹脂シート、看板 |
食品 | フッ素樹脂製チューブ、容器、ケース、コンベア |
その他 | フッ素樹脂シート、チューブ、テープ、その他成形品 |
⇐ 作用のメカニズム 使用方法その他 よくあるQ & A ⇒